高温障害で一等比率が五割前後にまで低迷している北陸三県コシヒカリだが、「秋落ちしない稲作り」を基本に独自の技術体系を構築する富山の海藻アルギット米は、三県コシでは出色の出来といえる一等比率70〜80%台を確保。一般稲と同じ厳しい高温条件の中で全量一等を記録した農家も出ている。盛夏期の異常高温が毎年のように頻発し、東日本以西では従来からの冷害対策以上に高温対策が重視される中、「高温に負けず最後まで稔ったコメ」として独特の栽培技術に注目が集まっている。

 
 北陸でコメ作付けの83%を占めるコシヒカリだが、今年の一等比率は富山48%、石川55%、福井51%と三県揃って伸び悩んだ。もともと夜温が高い西日本のコシなら“一等五割”はそれほど珍しくない数字だが、北陸では異例中の異例だ。出穂や登熟期の高温・熱帯夜や激しい気温差、収穫期のフェーン現象等が原因とみられ、富山の場合、着色・胴割れは比較的少ないものの、乳白等の未熟粒が多発した。
 そんな中、滑川市の常田久紀さん(富山県海藻アルギット米生産部会会長)が栽培したコシは、全量(約870袋)が一等に格付けされた。県平均を下回る深刻な等級低下に見舞われた地域も多い中、常田さんの「全量一等」は検査員にも驚かれたという。生産部会事務局の板橋均さんによると、富山アルギット米全体(全量コシ)でも県平均を大きく上回る70〜80%台を確保している。今年のアルギット米の出穂期は一般コシより二〜三日遅い程度。登熟期の高温や収穫期のフェーン現象など条件は一般稲と同じだった。違うのは稲の作り方だ。徒長して倒れやすいコシの場合、早期に分けつを確保したあと、六月に強い中干しをして肥料を切り、丈を抑えて倒伏を避けるのが通常の栽培。一般田ではこの時期、3.5〜3.0程度にまで葉色を落とすという。
 対照的にアルギット稲作では、茎数確保を急がず、出穂四十五日前に目標の八割になるよう、じっくりと確実に分けつを取る。六月も強い中干しは厳禁。深水が基本で、六月中旬から海藻アルギット入りパワー有機肥料を二回に分けて投入し、青々とした葉色(4.5程度)を保ちながら穂首分化を乗り切る。天然栄養源(「シンキョーライト」、ケイ酸66%以上)を施用して根張りを良くし、太く堅い茎を作るのもこの時期だ。
 この時期(例年だと六月二十日〜七月二十日)を生産部会では「落とし穴の時期」と独特の呼び名で位置づけ、「味と収量を決める最も重要な時期」として細心の注意を払う。部会全員が参加する青田回りも、この時期の前に実施する。「穂首分化期は、人間でいえば赤ちゃんの首が据わり始める頃。この時期に十分な栄養を送ることで収穫まで生き続けるたくましい根ができる」と板橋さんは語る。
 
 
    ↑7農協183農家が生産(前列右が常田会長)
 
 会長の常田さんもこの時期の追肥の意味を次のように強調する。「本当の栄養は穂肥ではなく“つなぎ肥”(追肥)。穂の基になる枝梗を形成するこの時期にキッチリ栄養を与え、出穂までつないでおくことが大事で、健全な枝梗ができて初めて穂肥も生きる。とくに今年のような暑い年は、肝心な時期に栄養不足にしておいて穂肥で慌てても遅い」。
   加えて今年は、近年の猛暑の経験を生かし、追肥時期を調整した。従来は一回目が六月二十日頃、二回目が七月一日頃だったが、今年は十日ずつ早め、六月十日頃と二十日頃に追肥した。
▽薄まき、疎植▽過剰生育を招く早期追肥や、品質・味を落とす実肥は厳禁▽化学肥料の穂肥も厳禁ー等の技術に加え、この追肥時期の調整が厳しい登熟条件下での安定品質に寄与したとみており、板橋さんは「暑い夏に耐えて最後まで稔り、甘みのあるアメ色のコメができた」と話す。
  ←農薬5割減、化学肥料は7割減(特別栽培米の看板が備え付けられています。)